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Guest 北海道を訪れた今を輝くゲストのスペシャルインタビュー


ミュージシャン【杉瀬 陽子】


関西を拠点として積極的に活動の幅を広げるシンガーソングライター・杉瀬陽子が、今年9月に約2年ぶりとなる2ndアルバム『遠雷』をリリース。そして、本作を引っさげて、札幌・旭川・富良野の3箇所をまわる初の北海道ツアーを敢行した。自身の表現と可能性を追求したアルバムへの想い、そしてツアーに込めた強い決意について、秘められた胸の内を聞いた。




インタビュー(December,2013)
杉瀬 陽子


>北海道にいらしたのは初めてですか?

初めてです。北海道には今まで一度も来たことがなくて、いつか旅行で来てみたいなと思っていたんですけど、今回ライブまでさせてもらえたので楽しさ倍増でした。最初に札幌へ来た時は雪もなくあったかい日だったんですけど、次に富良野へ行ったら雪が積もっていてびっくりしました。関西にいると雪の中で過ごすことがないので、関西に住んでいる感覚とは全然違いますね。北海道はすごい寒いんですけど、想像していた以上に広くて、豊かな土地だなと思いました。マイナス20度とかになる寒さを体験したことがなくて、顔が痛くなるというのを聞いたので、まだ本当の厳しさをわかっていないんでしょうけど。

>実際にライブをされてみて感想はいかがですか?
正直、知名度もないので「誰やねん?」っていう感じだと思うんですけど、どの土地でもたくさんの方々に来ていただけて、あたたかく迎えてくださったので、ものすごく感激しました。道内を3箇所もまわらせてもらえる機会なんてなかなかないですし、音楽仲間もびっくりしていました。ライブで得たこともすごく多くて、それを歌詞にしてみたいですね。全国どこをまわっても人があたたかいのは変わらなくて、本当に感謝しかないので、その方々に対していつか必ず恩返しができるように、曲を書いて、リリースも頑張っていきたいです。

>今回は約2年振りとなる2ndアルバム『遠雷』のリリースツアーとなっていますが、前作から書き溜められていたのですか?
書き溜めたものと、このアルバムのために新しく書いた曲と半々ですね。

>長い時だと1年に2~3曲と、曲作りに時間を掛けられるそうですね。
本当に時間がかかってしまうんです(笑)。のんびりしているので、締め切りがないとあまりたくさん曲を書かないんですけど、今回は頑張って作りました。私は曲を作る時に楽器を使わなくて、歩いている時や自転車に乗っている時にいろいろメロディーを口ずさんでいる中で、気に入ったものを柱の陰とかで携帯に吹き込んで、それを家に持って帰って膨らませて、コードをつけていく感じですね。その時々なんですけど、一曲一曲に対してこのキーワードというのがあって、そのキーワードから歌詞やメロディーを膨らませています。

>日本語で綴られた歌詞は、情景が浮かぶような詩的な表現ですね。
日本語はすごく大事にしていて、日本語にしかない表現とか音感とか、今回の「遠雷」だと“曼珠沙華”や“線香花火”だったり、日本語で表現することには重点を置いています。自分がノスタルジックな懐古主義なところがあって、どうしてもそういう部分が前に出てしまいますね。聴いた時に、それぞれに風景や思い出だったりが目に浮かぶと良いなと考えていて、自分は中原中也さんや竹久夢二さんとかが好きなので、そういう詩的な世界観を出して行けたら良いなというのもあります。詩集をよく読むんですけど、広辞苑を読むのも好きで、この言葉は日本的だなとかインスピレーションを受けて、広がっていくこともよくあります。

>今作は個性豊かな楽曲が並んでいます。
1stアルバムをシンプルに作ったので、今回はいろんな人に聴いてもらって引っかかるものがあればと、意図的に幅広く作ったんですけど、これから自分がどういう方向に向かって行くのかというのも中に入れて、それが次のきっかけにつながる曲になると良いなと思いました。「クジャク」という曲は大分早くに作った曲なんですけど、どうしてもホーンとかを入れたくて前作はシンプルに作るというコンセプトがあって外していたので、今回ようやく入れることができました。

>もともとミュージシャンを目指されていたんですか?
なにかしらずっと音楽はやってきていて、全然違うジャンルだったんですけど、最初はハードロックから入って、パンク、ハードコアをやってと、その時々の流行にのってきていて…(笑)。もともとのきっかけは〈すかんち〉というバンドが大好きで、〈すかんち〉を聴いてベースを弾き始めて、そのまま〈クイーン〉とか〈レッド・ツェッペリン〉のコピーをやったりしてきて、ちょうど大学に入った頃にシーンがメロコアとかスカコアが流行り出していて、それから「パンクやろうぜ!」みたいな感じで、ベース&ボーカルでハードコアとかパンクをやったりしていました。

>全く想像つかないですね!
逆に、その当時の友達には今の方が違和感があるって言われますけど…(笑)。

>どちらも御自身の表現なんですか?
どちらもやりたいことですね。歌もちゃんと聴いてもらえたいというのが今のスタイルなんですけど、気持ち的にはパンクとかハードコアとかも並走してやりたいんですよね。パンクとかハードコアをうわー!ってやっている時の方が自分的にはすごい自由で、「生きてる!」って感じがするので。でも、この9月くらいに声を潰してしまったので、そういうことはもうできないでしょうけど。

>ソロでの表現として今のスタイルに辿り着かれたきっかけは?
大学の時に、先輩と一緒に音楽活動をする機会があったんですけど、その方がブラックミュージックを主にやられていて、そこでいろんな音楽を教えてもらったんですけど、もちろん私がそういうパンクをやっているのも知っていて、「この先もずっと歌っていきたいと思っているんやったら、パンクではきっと歌えなくなる時が来るから、ちゃんと歌ものをやった方が良いんちゃうか」というアドバイスをいただいて。それでいくつになっても、ずっと歌っていきたいなと思ったのがきっかけです。

>表現としてかなり異なりますが、とまどいはありませんでしたか?
全然違いますけど、とまどいもあまりなかったです。日本人なので、ユーミンさんとかは日常の中で耳にしてきていますし、母が井上陽水さんや高橋真理子さんが好きで聴いてきたので、意外とすんなりとできたかもしれないです。今の方がパンクやっていた時より手応えは全然あるんですけど、その分曲作りが難しくなったというか。パンクが適当なわけではないんですけど、パンクの頃は何も考えずに歌詞や曲を書いていたので、自分が楽しければいいから、とりあえず何か歌詞を書いて歌おうとやっていたんですけど、ひとりになると、ギターのリフに注目がいくとかがあんまり無くなって、全部私に注目が集まるので、そうすると歌詞やメロディーもより伝わるものをという重圧感はありますね。

>弾き語りのライブだと、どこにも逃げ場が無いですよね。
そうなんですよ。ずっとバンドでやってきたので、かなり孤独です。出来上がった時に、メンバーに「ここ、どう思う?」とか聞くと、「こっちの方が良い」とか「めっちゃいいやん!」とか話し合いもできたのが、自分ひとりだと、当たり前ですけど自分で判断するしかないので、曲に対しての責任感は意識として変わったかもしれません。

>ミュージシャンとして自身の表現を突き詰めていらっしゃいます。
自分の好きなことで食べて行くのは大変なことですし、もちろんすごく覚悟はいるんですけど、歌が好きなのが根底にあって、やっぱり歌うことを辞められなかったんですよね。OLもずっとしていたので、音楽をいつ辞めようかな、いつ辞めるべきかなっていつも考えていたんですけど、「社員になりませんか?」とお声掛けをいただいた時に考え抜いて、歌を歌うことがどうしても諦められなかったんです。

>その覚悟を決められたのはいつ頃ですか?
実は…まだ今年なんです。9月までOLをしていたので、このツアーが決まった時に、ようやく覚悟を決めました。やりたいことはたくさんあるし、ここからもっと広げていかないといけないんですけど、表現する人にとって一番駄目なことがぶれることというのが私の中にあるんですよね。自分に一本芯がある中での振り幅はすごく大事で、それを振り切ってしまうと、やっぱり聴いてくださる方もとまどってしまうと思うんです。杉瀬陽子というオリジナリティがある中の範囲で、これからもいろんなことに挑戦していきたいです。

>今後の展開も楽しみですが、時間がかかりそうですか?
それは去年までの自分なので…来年からは必死に頑張って作ります(笑)!



2ndアルバム『遠雷』
HRCD-050 / ¥2,100-(tax in)



〈杉瀬 陽子〉
奈良県出身、大阪府在住。主に弾き語り、時にバンド形態で、関西を中心に全国で演奏活動中。2011年6月、1stアルバム『音画』をリリース。2012年、奇妙礼太郎トラベルスイング楽団のアルバム『桜富士山』(2012年7月発売)に収録される、「桜富士山」「SWEET MEMORIES」にゲストボーカルとして参加。同年7月、【FUJI ROCK FESTIVAL 2012】に、奇妙礼太郎トラベルスイング楽団のゲストボーカルとして出演。2013年9月、約2年振りとなる2ndアルバム『遠雷』をリリース。
オフィシャルサイト:http://sugiseyoko.com



text:Pilot Publishing / photograph:Syouta Tanaka
December,2013




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