仙台出身・札幌在住の丹治久美子が手掛けるフェルトのブランド。羊毛を薄く何層も重ねて縮絨する手法“フェルトメイキング”によって、世界観を感じさせる個性的な模様のフェルトバッグを中心に展開。その作品は、バッグを持つ人はもちろん、その姿を目にする人も楽しめるよう、”白一色に染まる北海道の冬”に映えるデザインが意図されている。
ウェブサイト:http://www.fairground-attraction.com
photograph Hideki Akita(TOOTOOTOO studio)
April,2013
自分にしかできない表現を追求
フェルトバッグが導く運命の出会い
フェルト作家・丹治久美子が手掛ける【Fairground Attraction】のフェルトバッグは、羊毛を何層も重ねて縮絨する手法(フェルトメイキング)による、縫い目のない一枚フェルト仕立てで、全ての工程が手作業で製作されている。風景に溶け込むように、そのバッグを持つ人はもちろん、それを見る人もが楽しめるようにイメージされたデザインが特徴で、模様にはそれぞれタイトルが付けられ、ストーリーが想像できるように作り込まれている。「“トリフェルトバッグ”は、「トリが運ぶ模様の物語」として、毎年新作の模様を製作しています。全て手作業なので、機械では決して作ることのできない作り方です。個体によって、模様の入り方も雰囲気も一点一点違いますし、生地にも面白さがあるので、アクセサリー感覚で一緒に連れて歩きたくなるような遊び心のあるバッグになっています。」
作品の定番(6種類)の形と定番の模様(18種)は、展開される場所によって色や形の組み合わせが変えられている。その作品は、羊毛特有の優しいイメージを生かしながら、素材が持つ特質や面白さを見事に引き出し、自身の表現するツールとしてその個性や存在感を存分に発揮している。「私の取り組んでいるフェルトメイキングは、とても“鞄”とは括ることのできず、模様のストーリー性のようなもの、なんとなくバッグに仕立てられたものというイメージです。羊毛の特質を生かして作られる模様は、異素材を巻き込ませることで生まれるのですが、偶然の面白い造形を絵を描くように模様に当てはめながら作業しています。インスピレーションを得ているのは、好きな音楽や昔読んだ本だったり、旅先で見たものや感じたことを形にしたいという欲求不満から。それと対局に、「この素材を巻き込ませたらどうなるんだろう?」という興味からの実験でもあります。物づくりをしている時は、自分と向き合いながら素材と格闘しているのでとても疲れますが、同時に誰にも邪魔されたくない、自分にとって至福の時間でもあります。」
丹治氏は自身で製作したバッグを決して持ち歩かない。“自分にしかできない表現”を追求したその作品は、まさに自身そのもの。彼女が創り出しているのは“プロダクト”ではなく、あくまで“作品”であり、その境界線を手探りで模索する。「売れると寂しくなってまた作る…という繰り返しで、本当はひとつも手放したくない気持ちが強いです。もちろん、買っていただいたお客様には感謝してますが…いつも、一生溶けないアメ玉を探している感じで、一喜一憂しながら、自分と向き合って物づくりをしてます。私が取り組んでいるフェルトバッグは、自分のバックグラウンドと、作品のストーリーも一緒にお譲りしている気がします。」
作品はインターネットでの通信販売以外では、店舗での販売などは意図的に行われておらず、全国の百貨店で開催される企画展に年数回参加し、作家本人による対面によって販売される。作家本人が直接伝える、作品ひとつひとつに込めた想いやストーリー。ふと目を奪われたバッグとの運命的な出会いは、やがて確信に変わり、新たな物語が始まる。「百貨店の方から「お客様はどこにでもいらっしゃいます」とアドバイスいただけたことは、自分にとって転機となりました。それから1年くらい地方をまわり、人との出会いから勉強になったことも多かったですし、百貨店に育てていただいたことは大きいです。もちろん、出展するからには売り上げも作らないといけませんが…「売りたい」とか「売れる物を作ろう」という気持ちにはならなくて、企画が楽しいものになるように、こちらから提案したり奮闘するのがとても楽しいです。一日何万人も来場する場所で、いかにお客さんに足を止めてもらえるか考えたり、そこでの新しい出会いがとても嬉しいんです。会期中、何度も足を運んでいただける方、作品を見て泣いてくださる方、遠路はるばる探して会場までいらしていただける方、いろんな方がいらしてくれるのはとてもありがたいです。自分のことではないように感じる時もありますが…ここ数年で、何かに乗った気もしてます。関わることも人も多くなってきたので、私も作品も少しだけ大人になったのかもしれません。これからも、見たことのないフェルトの世界をご覧いただけるように頑張ります。」
photograph Hideki Akita(TOOTOOTOO studio)
April,2013
インタビュー(December,2009)
丹治 久美子 / 『Fairground Attraction』
>まずはブランドを始められた経緯について聞かせてください。
>もともと何かを自分で作ろうと考えられていたんですか?
>ブランドとして活動を始められたのはいつ頃からですか?
>ブランド名の由来は?
>ブランドとしてのコンセプトはありますか?
>北海道の地域性が反映されているんですね。
>活動されていた期間のわりに、初個展は最近なんですね。
>ストイックですね…。ところで、丹治さんも認証されている「札幌スタイル」について聞かせてください。
>色使いや組み合わせがとても個性的ですね。
>パターンひとつひとつに名前がつけられているのも楽しいですね。
>柄はどのようにして生まれているのですか?
>“鳥”をモチーフにされたバッグはとても個性的ですね。
>フェルトはやぶけたりはしないんですか?
>バッグの型は今どれくらいあるんですか?
>ブランドとしてひとり歩きし始めたのかもしれませんね。
>では最後に、今後の展開について聞かせてください。
<取り扱い店>
『札幌スタイル』
URL http://www.city.sapporo.jp/keizai/sapporo-style
photograph Kei Furuse(studio k2)
December,2009