騒動の果て、選択した結末
別れ際、「これでさよならですね」と呟いた彼女が微かに笑った。いつも大人のように冷めた表情から、ほんの一瞬だけ、素が覗いた気がした。類い稀なる感性と衝動そのままに、信じられないほどのスピードで、音楽シーンを一気に駆け抜けた彼ら。残された3枚の作品は、まるで鋭い爪でえぐる傷跡のようだ。彼らにとってその活動は栄光なのか、挫折なのか。けれど〈THE★米騒動〉は確かに今、ひとつの区切りを迎えた。 彼らが選択した結末を、僕らはただ受け入れることしかできない。でも、それは終わりじゃない。不安と期待を抱え、それぞれ別の新たなステージへと踏み出していく。10代から、大人へ。甘酸っぱいような、切ないような、あの頃の気持ちをふと思い出した。淡く儚い、遅い春が終わりを告げる。
インタビュー(May,2014)
石田 愛実 / 〈THE★米騒動〉(Vo&G)
>突然の活動休止発表に驚かされましたが、決断に至った経緯を聞かせてください。
>そりゃ、言いますわ。
>すごくできたお方ですね。
>高校の頃のような自由さや関係を取り戻せたのでしょうか?
>『輝かしい未来へ』と前向きなタイトルなわりに、中身とギャップがあります。
>今作は表現者として本当にやりたかったことや本音が見えた気がします。
>社会的なプレッシャーを感じて、押し出されたみたいな。
>自分達の意志や表現とは別に求められるものがある?
>これまでの活動を振り返って、一番印象に残っていることは何ですか?
>バンドとしてはいかがですか?
>活動が勢いに乗って、その時の状況をご自身ではどう捉えられていましたか?
>北海道の大舞台【RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO】のステージにも立ちました。
>活動の中でそういうタイミングもあったんですね。
>【RSR】や各地フェスに出演して、ライブで東京と行き来してと、バンドマンが想い描く理想はかなり経験できたのでは?
>活動休止を決めたタイミングというのは、何かきっかけがあったんですか?
>表現と折り合いをつけて、活動を長く続けてみようとは考えなかったんですか?
>まわりからどんなに「頑張れ」と励まされても、結局は他人事になってしまいますね。
>解散の理由として、メンバーのおふたりは「安定を求めて」と発表されていますね。
>“無期限活動休止”とされていますが、いつかはという期待はできますか?
>やり残したことは本当にもう無いですか?
>バッサリ言い切りますね。でも、表現する場を失った感は無いですか?
>(笑)。就職はもう決まっているんですか?
3rdアルバム『輝かしい未来へ』
WRT-003 / ¥2,000(tax out)
【THE★米騒動】
メンバーは、石田愛実(Vo&Gt)、沖田笙子(Ba&Cho)、坂本タイキ(Dr&Rap)。1992年生まれの3ピースバンド。2008年、北海道・札幌平岸高等学校の軽音楽部にて結成。札幌を中心にライブ活動開始。2010年夏、【閃光ライオット2010】にてグランプリを獲得。2011年6月、1stミニアルバム『どうでもいい芸術』をリリース。2012年7月、2ndミニアルバム『十九歳でぜんぶ終わる』をリリース。2014年5月、3rdミニアルバム「輝かしい未来へ」をリリース。5月のライブにて無期限活動休止。
オフィシャルサイト:http://the-komesodo.daa.jp
text:Pilot Publishing / photograph:Hideki Akita(TOOTOOTOO studio)
May,2014