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Guest 北海道を訪れた今を輝くゲストのスペシャルインタビュー


谷中 敦 / 東京スカパラダイスオーケストラ(Baritone sax)


日本におけるスカシーンを牽引し続けるパイオニア・東京スカパラダイスオーケストラが、通算16枚目となるオリジナルアルバム「Walkin’」をリリース!世界を一変させたあの日以降、メンバーは何を想い、何処へ向かって歩き続けるのか。スカという音楽が導く、明日への希望と未来への可能性。





インタビュー(April,2012)

>今年3月に通算16枚目となるオリジナルアルバム『Walkin’』がリリースされましたが、タイトル曲である「Walkin’」は今作にとってどのような位置づけなのでしょうか。

今作はここ2年くらいの曲を集めたベスト的な位置づけで、現在のスカパラの歩みが詰まった作品になっています。バラエティに富んだ作品が並ぶ中で、「Walkin’」は最後の最後で軸に据えていこうという気持ちになった曲ですね。もともとはMiles Davisさんの曲で、メンバーのNARGO(Tp)は小学生の頃から好きで聴いていたので、ソロを録るのも緊張すると言っていました(笑)。原曲がとても素晴らしいアレンジなのでハードルも高かったんですけど、自分達なりに良い味が出せたので一曲目にしたし、タイトルソングにしました。この曲にはJon Hendricksさんが付けている歌詞もあって、「まわりの景色を見ながら一緒に歩いていこうよ」みたいな気楽でカジュアルな歌詞だったので、それがどういう散歩で、どのような目的を持っているのかという意味合いを自分達なりに付けて演奏しました。僕らはこれまでずっと走り続けて来たバンドなので、本当は全然“Walkin’”なバンドではないんですけど…(笑)、今は世の中的に「一緒に走ろうぜ!」と呼びかけてもリアリティーがないので、「一緒に楽しみながら格好よく歩いて行こう」という気持ちを込めています。2年間の中には震災もありましたけど、「震災後も一歩づつ歩き続けています」という意味合いも含まれています。

>様々なジャンルのミュージシャンとコラボレーションされた個性溢れる楽曲が収録されていますが、中納良恵(EGO-WRAPPIN’)さんがフューチャリングされた「縦書きの雨」は、谷中さん自らが作詞も手掛けられています。
「縦書きの雨」に関して、ひとつエピソードを言わせてもらうと、震災が起きた後にメキシコでのライブを控えていて、不安な気持ちのまま現地へ向かったんですけど、メキシコのオーディエンスがすごく盛り上がってくれたし、みんなが日本の復興を願ってくれて、すごく勇気をもらえたんです。ミュージシャンとして活動を続けてもいいのかとすごく葛藤していたんですけど、やっぱり“スカ”という音楽を続けていかなくてはならないと再認識できたし、日本人としてどうあるべきかというのも改めて考えるきっかけになりました。東京は直接の被災地ではありませんでしたけど、バスや電車などの交通機関が麻痺してしまったので、帰宅するために長距離を歩いて帰らなくてはいけない人が多かったんですよね。幹線道路の歩道は見渡す限り人で埋め尽くされて、みんな取り乱すこともなく黙って歩いていたんですけど、その姿を見た時に日本人はやっぱり凄いと感動させられました。被災地では想像もつかないほど大変な目に遭っているのは当然理解した上で、東京で騒いでいる場合じゃないという自制心や思いやりも受け取れるし、全て飲み込んで黙って歩いているのは凄いと感じたんです。その後の復興へ向けた活動でも、一生懸命声を出している人の隣で黙って支えている人達がいてくれるお陰で日本という国は成り立っていますけど、そういう方々にも言葉として外へ出したい時がきっとあると思うんです。だから、口には出さない想いが“縦書き”の雨となって降って、いろんな人の言葉を読みながら癒されていくというイメージなんですよね。中納良恵さんは、僕にとってシャーマンのような存在で、みんなの代わりに代弁して歌うことのできる人だと思ったんです。

>「水琴窟-SUIKINKUTSU-」でフューチャリングされたピアニストの上原ひろみさんは、昨年『RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO』でも共演されました。
上原ひろみさんは『RSRFES』のステージで笑顔で身を乗り出して演奏してもらえたのが、僕の中で本当に嬉しかったです。あの時は、他のアーティストもたくさん舞台袖で観てくれていて、その中にヒロトさん(THE CRO-MAGNONS)もいて「泣きそうになっちゃったよ」と声を掛けてもらいました。「水琴窟-SUIKINKUTSU-」のレコーディングでは、スタジオのど真ん中に上原さん自身のグランドピアノをばーんと置いて、メンバー全員の見える位置で弾いてアイコンタクトを取りながら演奏したんですけど、最初にポロンと弾いただけで凄さを感じました。何回か演奏して一番最後のテイクは手を上げて、自分でOKテイクを決めていましたけど…(笑)、そういうところにも彼女の強い意志を感じました。中納さんに関してもそうですけど、部分的に直す箇所なんて一箇所も無いし、通して歌ったらそのテイクを選ぶか、もうひとつのストーリーを選ぶかなんですよね。力のあるミュージシャンは、最初から最後までの流れを踏まえた上で、全体を通してのストーリーをしっかり持っていることを気がつかさせられて、すごく勉強になりました。


>今作で特に印象に残っていることを聞かせてください。
「All Good Ska is One」はFISHBONEのAngelo Mooreさんに歌ってもらったんですけど、この曲を作る前に悩みながら訪れたメキシコでのライブで“スカ”をやっていて良かったと思えたし、これからも続けていかないといけないと認識できた後でのレコーディングだったんですよね。“スカ”を信じた上で「We can do it」をテーマにしたんですけど、やっぱり震災を置いてはおけなかったし、“スカ”という音楽をみんなで演奏するように、協力しながら助け合っていこう、音楽でひとつになれるということを伝えたかったんです。Angeloのレコーディングには直接立ち会えなかったんですけど、「日本のみんなのために祈りを捧げておいたよ」と言ってくれて、状況を察して歌ってくれたことに非常に感動しました。Manu Chaoさんもボーカルとギターで作ったデモテープを送ってきてくれて、それを元に自分達で作業を進めて、最終的な作業だけスカイプでやり取りをしました。向こうはブラジル・サンパウロの田舎町のホテルで夜中2時、こっちは東京のスタジオで午前中だったんですけど、インターネットを介して顔を見ながらやり取りをしたのもすごく楽しい作業でしたね。今回、お互い離れた場所でレコーディングをしても、こんないい作品を創ることが出来た事は大きな発見ですね。それは僕らだけじゃなくて、直接会わなくてもお互いに音楽が気に入ったらコラボレーションできることもあるだろうし、曲が作れるんじゃないかと音楽の新しい可能性を感じました。

>結成時から一貫して提案されている”トーキョースカ”について、現時点ではどのようにとらえられていますか?
結成した当時は、まだパソコンもインターネットも普及していなかったので、友達やレコードショップの店員さんから情報を収集していたんですけど、自分達にとって東京は人とのコネクションや関係性を持ってやりたいことが選べたり、掘り下げようと思えばいくらでも掘り下げられたり、いろんなものをミックスできる街だというところから始まっているんですよね。それらを混ぜ合わせられる大きな器として“スカ”という音楽を演奏し続けていく中で、意識して東京らしさを出そうとしてもやっぱり出せないと気がついたし、どうしても滲み出てしまう部分にらしさが出てくると思うんです。口では上手く言えないですけど、スカパラらしいとか日本人らしいところを、海外の人達とかは何となく感じ取って、面白がってくれている気がしますね。どの分野でも同じですけど、日本人はすごく取り入れるのが上手いし、自分のものにしてしまうので、それがスカパラの表現として続けていることだと思います。

>デビューして23年目という長く活動を続けられることには大変な苦労も伴われると思いますが、どのように乗り越えられてきましたか?
小さな変化を楽しめることは、すごく大切なことだと思います。うちのメンバーはレコーディングでも、最後の詰めの作業で4小節を2小節に一部替えるとか細かなところにもすごくこだわっているんですけど、最終的な仕上がりで聴こえ方が確かに違うんですよ。こだわりを突き詰めていくと楽しいし、面白いものも生まれていきます。あとは、新しい挑戦ですね。他の誰かが先にやっているから止めようではなく、自分達にとって新しいこととしてとらえると、自分達なりの取り入れ方や表現ができるんですよね。慣れてくると一連の作業が過去のコピーになってしまって、あまり成功に習い過ぎると型にはまってしまうんですよ。ギャンブルをさせてもらえない世の中ですし、成功例を手堅く繰り返してしまうんですけど、ほんの少しでも新しい挑戦は加えておくと良いと思います。


東京スカパラダイスオーケストラ 2012 TOUR『Walkin’ 』
2012年6月21日(木)@北海道・札幌ペニーレーン24
開場 18:00 / 開演 19:00

2012年6月22日(金)@北海道・札幌ペニーレーン24
開場 18:00 / 開演 19:00

2012年6月24日(日)@北海道・岩見沢市民会館
開場 17:00 / 開演 17:30



16th Album 「Walkin’」全14曲収録
CD+DVD CTCR-14755/B :¥3,300
CDのみ CTCR-14756 :¥2,800
※CD+DVDの初回盤はオリジナル特殊パッケージ仕様
“TOKYO SKA”の新たなスタンダードとなる通算16枚目となるオリジナルアルバム。ジャズ界から、海外から、アニメから、様々な分野とのコラボレーションにトライした楽曲を含む全14曲入りのアルバム。中納良恵(EGO-WRAPPIN’)をゲストボーカルに迎えた楽曲や、元マノ・ネグラのManu Chaoとのコラボ曲が遂に実現!



東京スカパラダイスオーケストラ
1980年代後半結成、1989年、黄色いアナログ『TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA』をインディーズでリリース。翌1990年、シングル「MONSTER ROCK」、アルバム『スカパラ登場』でメジャーデビュー。以降、ルーツのスカをベースに、独自のスタイルとなる“TOKYO SKA”を確立し、日本国内はもとより、世界各国でライブを繰り広げる世界屈指のライブバンドである。
オフィシャルサイト http://tokyoska.net




text Pilot Publishing / photograph Hideki Akita(TOOTOOTOO studio)
April,2012



RSS Comments 3 Tweet

  1. Comment by yukDIGkooooo (@OH_lilac) 2012年6月6日 @ 4:32 PM

    谷中さーんっっっ(*/ェ\*)http://t.co/kwM0x0ga


  2. Comment by カプチーノ* (@mitsuemi) 2012年6月23日 @ 7:13 PM

    谷中 敦 / 東京スカパラダイスオーケストラ(Baritone sax)|Pilot web http://t.co/lMPlI8Dl ここ、チェックしてなかった… カオルさん、このサイト見たかな。


  3. Comment by とも (@b1818) 2012年7月9日 @ 12:56 PM

    画になるなぁ・・・日本語じゃない台詞が堪能でwしゃべらせると残念率高いけどw
    http://t.co/4jucUYXm



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