北海道・札幌を拠点とした出版 / 編集プロダクション

Web Magazine "PILOT"

  • twitter
  • twitter
  • RSS

Guide 北海道のカルチャーや自然を体感できる観光ガイド

アルテピアッツァ美唄アルテピアッツァ美唄アルテピアッツァ美唄アルテピアッツァ美唄
  • アルテピアッツァ美唄
  • アルテピアッツァ美唄
  • アルテピアッツァ美唄
  • アルテピアッツァ美唄

美術館『アルテピアッツァ美唄』(美唄市)


住所 北海道美唄市落合町栄町
営業時間 水曜日〜月曜日 9:00〜17:00(カフェアルテは10:00〜17:00)
定休日 火曜日 / 祝日の翌日(日曜日は除く) / 年末年始(12月31日〜1月5日)
電話 0126-63-3137
料金 入場無料
ウェブサイト http://www.kan-yasuda.co.jp/arte.html

のどかな自然が四季に移ろう山里に位置し、廃校になった旧栄小学校の再生により開設された芸術文化交流施設・彫刻公園。イタリア語で芸術広場を意味する交流広場は7万平方メートルの広さを有し、地元出身の彫刻家・安田侃の作品約40点を常設展示している。木立が緑どる芝生広場には、赤い屋根が緑に映える旧屋内体育館や幼稚園舎になった木造校舎がたたずみ、かつて炭鉱の炭住街として栄えた地域の学舎の面影をとどめている。2007年4月には、カフェと工房がオープン。くつろぎスペースと体験の場が新たに加わった。

安田 侃
1945年、美唄市生まれ。東京芸術大学大学院彫刻科修了後、1970年にイタリア政府招聘留学生として渡伊。ローマ・アカデミア美術学校でペリクリ・ファッツィーニ氏に師事。以降、大理石の産地として知られる北イタリアのピエトラサンタにアトリエを構え、大理石とブロンズによる彫刻の創作活動を続けている。
ウェブサイト http://www.kan-yasuda.co.jp/j






インタビュー(August,2007)
伊東 奈美 / 『アルテピアッツァ美唄』スタッフ

>まずは美術館の紹介をお願いします。

とにかく自由な場所ですね。おしつけるものが何もありませんし、いらしてくれた方それぞれが思い思いに感じるものが違っていて、100人来たら100通りの楽しみ方がある場所です。自然の中に彫刻がありますので、季節や時間帯、天気によっても違いますし、もっと言うと、その時の気持ちによっても伝わるものが全然違うと思います。それぐらい観る人に委ねられていて、自由にさせてくれる場所です。

>美術館の見どころについて聞かせてください。
作品に直接触れることができますので、作品の魅力を実感できるのが素晴らしいと思います。そして、安田侃さん自らが手掛けているというのはやはり特別ですね。オープンが1992年7月なのですが、その1年前位から整備を始めて、それから以後約16年間、今もなお作り続けています。

>作品と自然が調和し、年月を重ねながら少しづつ作り上げられている風景は、まるで天国のように素晴らしい空間ですね。
あとは安田侃さんが美唄市出身というのも魅力のひとつだと思います。作家が生まれ育った街にあるものですから、札幌や東京にあるのとは全く意味合いが違ってくると思います。安田侃さん自身も「現時点で絶対と言えることは、自分が美唄で生まれ育ったこと、それだけは変わらない」と仰っていました。

>地元に対しての思い入れが強いのですね。
そうですね。もともと美唄は炭坑街で、少なくとも9万5000人が住んでいた街が、炭坑が閉山になってからどんどん人が減って、現在は2万5000人くらいの街になってしまったのですが、その当時からずっと美唄に住み続けている人は街が死んでいく姿を見たというくらい、当時を辿っていけるものが残ってないんですよね。それくらいなにもかもが変化してしまったんです。その中でこの校舎が残っているのを見て、「自分はここに入って来て、ようやく故郷へ帰ってきた気がする」と仰っていただけたんですよ。安田侃さん自身も、青少年時代を活気のある頃の美唄で過ごし、たまに帰っては街がさびれていく姿を目の当たりにされて、「彫刻家として故郷にまた人が集まる場所を作りたい」という強い想いがあったようです。この美術館には幼稚園が併設されているのですが、「彼らが大人になった時にも変わらずに残っているもの、何もかも変わってしまうこの世の中で変わらないものをどこかにひとつくらい残してあげたい」と仰っていたのが印象に強く残っています。

>昔では当たり前だった光景も、今ではどこを探しても見当たらないという現実は、どの時代もそうなのかもしれませんが、良くも悪くも深く考えさせられます。作品の見せ方などで特に気を使われている部分はどこですか?

わたしたちは安田侃さんが故郷に作っている空間で留守番している人間なんですよね。わたしたちはお客様と直接接していますので、いらしてくれた方にはより楽しんでいただいて、来て良かったという気持ちになっていただけるよう心掛けています。

>ところで、安田侃氏はどんな人物なのでしょうか?
普段はニコニコおじさんです。とてもおおらかで、あったかくて、すごく優しい方です。ですが、彫刻作品を設置する時など、ここ一番で判断をされる時の緊張感はすさまじいですね。側に近付けないくらいぴりぴりされています。自分の彫刻を設置した瞬間にこの自然の中でいきいきと呼吸できるのかをすごく大切にされていて、何十トンもある作品をそれこそミリ単位で設置をされています。

>安田侃氏はイタリアに在住されているそうですが、作品はイタリアから運ばれているのですか?
イタリアで作られたものがコンテナに積まれて運ばれてきます。そして、安田侃さんが帰ってきている時に設置できるよう、綿密に打ち合わせを重ねながら、地元の人間が土地に形づくっておいて準備をしておきます。

>では最後に、美術館を通じて感じて欲しいことは?
難しく考えずに、この自然の中に身をおいて、非日常的なゆっくりとした時間を過ごして欲しいなと思います。作品をどう作ったかというのは、初めて会った人に心の内を聞いているのと同じで、きっと心の奥底にあるものを形にしているのですから、それは作家だけのものでいいと思うんです。作品が全部で41点あるから全部観なくてはとか、観たからには解説も知っておかなくてはとか、難しく考えないで欲しいんですね。例え、何もしないで芝生で寝転んでいたとしても、ここで良い時間が過ごせたのなら、それでいいと思うんですよね。


text Pilot Publishing / photograph Kei Furuse(studio k2)
August,2007




Resent Posts|Guide » Museum »


協賛店募集

New Magazine

最新の記事

人気記事